『主を忘れるな』 申命記8章11-20節
牧師 津村春英
出エジプトを導いたモーセは約束の地を前にして、イスラエルの民に次のように語りました。その地に定着し、衣食住が満たされても、「あなたは、『自分の力と手の働きで、この富を築いた』などと考えてはならない。むしろ、あなたの神、主を思い起こしなさい。富を築く力をあなたに与えられたのは主であり、主が先祖に誓われた契約を果たして、今日のようにしてくださったのである」(同17, 18)と語りました。下線部は、‘The New Brown, Driver, and Briggs Hebrew and English Lexicon of the Old Testament’によると、単なるrememberではなく、recallやkeep in mind「心にしっかり覚えておく」と解釈しています。
日本人初のノーベル賞受賞者湯川秀樹氏の、「中間子理論」発表までの歩みを綴った『旅人』(角川文庫)の終わりの部分には、「峠の茶屋で重荷をおろして、一休みする気持ちに例えることができる」とあり、また、「是非とも書いておかねば気のすまないことが二つある」。それは、自分の研究の環境を与えてくれた人々への感謝と、その研究に協力してくれた人々への感謝だとあります。私たちは、人生の峠の茶屋で何を考えますか。必要のすべてを与え導いてくださっている神様に感謝をささげることができますか。そして、苦しみの時も喜びの時も主なる神様を心にしっかりと覚えておくことができますか(ローマ8:28)。