『偽りのない愛』ローマの信徒への手紙12章9-21節
牧師 津村春英
使徒パウロは、当時の世界の中心であるローマの教会の信徒たちに対して、キリスト者はどうあるべきかについて手紙に記しました。まず、「愛には偽りがあってはなりません。悪を憎み、善から離れず、」(12:9)とあります。偽りの愛とは、悪を退け、善に密着すること、が直訳です。「あなたがたを迫害する者のために祝福を祈りなさい。祝福を祈るのであって、呪ってはなりません。」また、「だれに対しても悪に悪を返さず、すべての人の前で善を行うように心がけなさい。」さらに、「愛する人たち、自分で復讐せず、神の怒りに任せなさい。」「悪に負けることなく、善をもって悪に勝ちなさい。」(ローマ12:14, 17, 19, 21)とあります。これらは主イエスの言葉に遡る(cf.マタイ5:39; 44など、ただしこのローマ書が先に書かれました)と考えられますが、十戒の教えを超えています。
夭逝のキリスト者詩人、八木重吉の詩に、「わたしは床の間に磔の図をかけておく その前ではとうてい人を憎みとおせない」とあります。偽りのない愛、それは主イエス・キリストの十字架に見られる愛です。主は、悪に対して悪をかえさず、善をもって悪に勝たれました。その極みが十字架です。私たちも、この「偽りのない愛」を自分のものとできるように励みましょう。